”個客”マーケティングに画期的なソリューション「マーケティングオートメーション」
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2014年から、「マーケティングオートメーション」という言葉は、日本国内における認知度が急激に高まってきています。もはやマーケティングを考える際に避けられないキーワードとなっており、新たな潮流として大きな関心と期待が寄せられています。とは言え、言葉だけが先走りしてしまう印象も否めず、マーケティングオートメーションへの理解と活用はどこまでできているかなど、まだまだ曖昧なところが多いです。
本コラムは、マーケティングオートメーションに関する基本知識の整理とともに、導入にあたってのメリットと注意点をご提示します。現時点で導入のご予定がなくても、マーケティング全般に共通する話でもありますので、ぜひご参考にしていただければと思います。
マーケティングオートメーションとは
マーケティングオートメーション(Marketing Automation、以下MA)に決まった定義はありませんが、本コラムでは、さまざまなチャネルで獲得した見込顧客や既存顧客の情報を一元化し、個々の顧客に適切なタイミングで適切なコミュニケーションが行えるように、マーケティング活動の一部を自動化し、顧客の育成やリードの創出をサポートするツールもしくはサービスと定義します。マーケティングオートメーションのほとんどはクラウド型で提供されており、OracleやMarketo、Salesforce.comをはじめとする大手海外ベンダーの日本市場進出とともに認知が広がり、現在はサービスを提供する国内の会社も増えてきています。
なぜマーケティングオートメーションが注目されるのか?
インターネットの発達とスマートデバイスの普及で、店舗やイベントなどのオフライン接点に、Webサイトやメール、デジタル広告、ソーシャルメディアといったオンライン接点も加わり、「オムニチャネル」という表現のように顧客接点の多様化が進んでいます。それと同時に、情報の発信と受信が容易になることで、消費者の意思決定と行動に影響する要因も多くなり、カスタマージャーニー(※)の複雑化に拍車がかかります。一方、テクノロジーの進化によって、Webサイトの閲覧履歴や購買履歴といった行動をデジタル化・可視化できる技術が登場し、あらゆるチャネルにおける顧客情報データを収集して解析することが可能になっています。
しかし、さまざまなチャネルから集まった膨大な情報を統合管理し、見込みのある顧客を洗い出し、それぞれに合ったアプローチを通じてエンゲージメントの度合いを高めていくという一連の作業をすべて人力で行うことは、そもそも無理があります。そこで、マーケティングアプローチの一部作業を自動化できるMAが登場し、たちまち注目されるようになったわけです。
矢野経済研究所が2015年12月に発表した調査結果によりますと、2014年のMAサービスの市場規模は168億円でしたが、2020年には420億に達すると予測されています(図1)。調査方法や定義の違いで数値が異なる調査データは他にも多数ありますが、いずれもMAの普及が今後一層広がることを示しています。しかしその一方、電通イーマーケティングワンが2015年4月に発表したレポートからは、国内企業のマーケティング担当者におけるMAへの理解度はまだ高いとは言えない現状も伺えます(図2)。
※カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、顧客が商品やブランドとあらゆる接点(タッチポイント)において、どのような体験をし、どのような感情で、どのように行動するという一連のプロセスを「旅」に例えた言葉です。
マーケティングオートメーションの機能
ベンダーによって提供するMAツールの機能に違いはありますが、代表的なものを簡単にご紹介します。
リード管理機能
マーケティング活動の実施対象となる見込客・既存客(リード)の情報を一元に保存・管理するデータベース機能です。顧客の属性情報(名前、会社名、連絡先など)や行動履歴情報(メール配信履歴、資料請求履歴、Webサイト閲覧履歴など)をMAの運用を通じて自動的に蓄積されていきます。
メール配信機能
特定のセグメント対象に、あらかじめ設定したシナリオ(条件)でカスタマイズされたメールを自動的に配信する機能です。配信対象、時期、内容を細かく指定することで、精度の高いメールマーケティングを効率的に行うことが可能です。
ランディングページと入力フォームの管理機能
流入経路や検索キーワードなどの条件によってランディングページや入力フォームを生成し、簡単に修正・更新できる機能です。もちろん、フォームから入手した顧客情報は自動的にデータベースに蓄積されます。
リード評価機能(スコアリング)
一定のルールに従い、リードに紐付く情報を点数化にし、リードの状態を定量的に表現・評価することで、確度の高いリードの把握・選出に役たちます。
キャンペーンマネジメント機能
オンラインとオフラインにわたり、リードにアプローチするキャンペーンを効率的に実行・管理する機能です。
ソーシャルメディア連携機能
特定のキーワードに関する投稿をモニタリングしたり、それらに対して返信やコメントできたりして、ソーシャルメディアとの連携でリードへのアプローチやキャンペーンの拡散が行える機能です。
マーケティングオートメーションのメリット
MAの力を正しく理解するためには、まず「オートメーション」、つまり「自動化」する対象をはっきりしなければいけません。先述のように、マーケティング活動の成果を上げていくためには、顧客一人一人に対して、適したタイミングで適したコンテンツを適した手法で提供する必要があります。この「誰に、いつ、何を、どうやって」という「シナリオ」が肝です。その精度を高めるためには、「シナリオ策定→シナリオ実行→結果集計・分析→シナリオ改善」というPDCAサイクルを回していく必要があり、その中でMAが自動化するのは、シナリオ実行のオペレーション部分と、シナリオ作成や改善に必要なデータの取得・管理部分です。
MAを利用することで、特に以下のようなメリットがあると考えられます。
- 個別のツール間のデータ連携を一元化かつ自動化することで、人的ミスが抑えられ、作業効率が上がる一方、個別ツールの単純連携では実現できなかったこともできるようになり、マーケティング活動の可能性が広がります。
- マーケターが煩雑な単純作業から解放され、本来の戦略策定や分析業務に専念でき、施策のパフォーマンス向上にコミットできるようになります。
- オペレーション部分の自動化により、PDCAの回転が早くなり、施策の改善と実行が効率的に行えるようになります。
つまり、生産性の高いマーケティング活動の実現が期待できます。
マーケティングオートメーションの導入・運用にあたる注意点
忘れてはいけないのは、MAが自動化できるのはあくまでマーケティングプロセスの一部であり、肝心な「シナリオ」を設計してくれるわけではありません。それに、分析に必要なデータ量、コミュニケーションに活用できるコンテンツ、ツールの使い方を熟知する人員など、MAを導入・活用するには、それなりのハードルがあるのも事実です。実際、MAを導入した企業から、「結局一斉メール配信にしか使っていない」「コンテンツの作成が予想以上に工数がかかる」「せっかくたくさんの機能があるのに使いこなせない」などと、お困りの声がよく聞こえます。MAは正しく導入され、正しく運用されて、初めてその力が発揮できるので、宝の持ち腐れにならないよう、3つの注意点をご提示します。
その1:人的リソースの確保と運用体制の構築
ツール設定やシナリオ設計、スコアリング設計、施策策定などの業務をこなすには、「マーケティング」「営業」「テクノロジー」という3つの知識を持ち合わせる人材が必要です。また、コンテンツが不十分な状態でMAを導入してしまうと、接触ができても次のアクションにつながらず、導入の意味がなくなります。そこで優良コンテンツを継続的に提供していける運用体制が不可欠です。MAは設計と運用で成り立っており、自社でカバーすることが難しい場合、外部リソースを視野に入れて体制を組み立てる必要性も出てきます。
そして、MAの応用には「スモールスタート」をおすすめします。まずは一つのセグメントに絞ってA/Bテストを行い、結果を活かしながら徐々に運用範囲を広げていきます。このように分かりやすいところからノウハウを貯めていけば、社内において自主性の高い運用体制を構築することが可能になります。
その2:ツールありきの導入・運用はしない
数多くの魅力的な機能を目の前にしても、決して導入の目的を見失ってはいけません。まず自社の現状を正しく認識し、解決したい課題や達成したい目標を明確にした上で、本当に必要なMAツールの機能を見極めていきます。また、運用段階においても、ツールありきのコミュニケーション手段に依存せず、常に柔軟な発想を持つことに心掛けましょう。そして、以前から使ってきたツールがあるから、そのツールに慣れているからといった理由で、MAの導入に後ろ向きになる姿勢も良くありません。確かにMAの導入・運用に一定のハードルはありますが、自社に合った運用ができれば、確実にマーケティング活動の質が上がることにらるので、まずは、お気軽に業者に相談してみてください。
その3:仕事が「楽になる」わけではない
「自動化」という言葉の響きは良いですが、MAの導入でやらなくてもいい仕事ができてくる一方、やらなければいけない仕事もたくさん増えるという覚悟は必要です。ツールの使い方を覚えるのに労力と時間が必要ですし、結果が出るまで試行錯誤を繰り返す必要があります。更に、今までできなかったアプローチが新たにできるようなるため、施策策定やコンテンツ制作、結果分析に必要な時間と知識が多くなります。MAの導入によって今までの仕事の「量」が減るわけではありません。しかし、「質」が上がることで生産性の向上に繋がるのは確実です。
まとめ
消費者の行動と心理がますます複雑になっていく中で、MAの登場は企業と顧客のOne to Oneマーケティングの実現に弾みをつけます。MAに対して、まだ疑問を持っている人もいれば、過度な期待をしている人もいるかもしれませんが、そのポテンシャルを認めると同時に、難しさや限界にも正しい認識が必要です。どうぞ今一度、自社のマーケティング活動を見直し、MAの導入や運用改善を検討してみてはいかがでしょうか。
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