マルチデバイス時代のユーザー像を捉える「ユニバーサル アナリティクス」
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Webサイトの運用・管理に関わっている方なら、「Google アナリティクス(Google Analytics)」をご存知の方も多いのではないでしょうか。Webサイトのあらゆる状況を把握できる、定番とも言えるアクセス解析ツールの名称です。そして提供者であるGoogleは、このGoogleアナリティクスの次世代版として、「ユニバーサル アナリティクス(Universal Analytics)」を2014年4月に正式リリースしました。
現時点では、従来版のGoogleアナリティクスでも今まで通りにデータの収集・分析ができていますが、今後サービス停止になることはすでに決まっており、ユニバーサルアナリティクスへの移行は、すべてのアナリティクスユーザーにとっては避けられない課題となっています。とは言え、移行したら何が変わるか、移行するにはどうすればいいかなど、疑問を抱いている方も少なくないはずです。
本コラムでは、基本概念と注意ポイントを整理しながら、その力を効果的に発揮するヒントを探っていきます。
ユニバーサルアナリティクス移行の概要
Googleアナリティクス(以下GA)とユニバーサルアナリティクス(以下UA)を理解するには、まずいくつかの概念を整理しておきます。
① アカウント
GAまたはUAの機能を利用するためには、少なくとも一つのアナリティクスアカウントが必要です。このアカウントを使って全ての設定や管理を行います。
② プロパティ
プロパティとはデータのまとまりを指し、各プロパティにはユニークなトラッキングコード(タグ)が生成されます。上の図で言うと、プロパティAにはA用のタグ、プロパティBにはB用のタグが発行されることになります。Webサイト、モバイルアプリなど、一意のタグで管理したい計測範囲を、一つのプロパティでまとめると良いでしょう。
③ ビュー(旧称プロファイル)
ビューとは、プロパティのデータを反映するレポートです。一つのアナリティクスアカウントには複数のプロパティを設定することができます。必要に応じてフィルタを設定することで、特定のデータだけ集約したビューを作成することができます。
④ トラッキングコード
トラッキングコードとは、Webサイトの来訪者のデータを取得するために対象ページに埋め込むプログラムのことです。「タグ」とも呼ばれています。
今回のUAへの移行対象は、全てのアカウントとなります。移行期限は明確に公表されていませんが、UAが正式リリースした後の2年以内と言われています。UAへの全面移行は、上記の②プロパティと④トラッキングコードの両方を更新する必要があります。
ユニバーサルアナリティクスでできること
そもそも、なぜUAに移行しなければならないかと言うと、もちろん今後従来のGAタグではデータの収集と処理ができなくなるという理由はありますが、実はUAには従来のGAと比べて強化・追加された機能がたくさんあります。これらの変更により、コンテンツに対するユーザーの反応やユーザーの行動を更に詳しくかつ正確に把握することができます。それでは、代表的なものをピックアップしてみていきます。
3種類のトラッキングコードであらゆるデジタルデバイスからデータを収集できる
Web向け、モバイルアプリ向け、その他のデジタルデバイス(ゲームや情報端末など)向けの3種類のトラッキングコードが用意されています。しかも従来のGAと比べ、柔軟性に富んでおり、設定とカスタマイズがより簡単になっているだけでなく、測定の精度も向上しています。
カスタムディメンションやカスタム指標で特有なデータを収集できる
ディメンションとは、いわゆる「分析軸」のことです。UAでは、デフォルトとは別に独自で作成できるディメンションと指標を使用し、従来のGAでは自動的にトラッキングされないデータを収集してレポート化することが可能になっています。任意の項目でより多種類のデータを取得することにより、幅広いかつ深みのある分析がしやすくなります。
外部データのインポート機能でオンライン/オフラインのデータを統合できる
CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)といった外部のデータを取り組んで、Webサイトやソーシャルメディアで取得している情報と合わせて分析することができます。
User IDを使ってデバイスをまたぐユーザーの行動を把握できる
この機能は、UAの最大の特徴とも言われています。ユーザーに固有のIDを付与することによって、複数のデバイス上で行われた複数のセッションを関連付けることが可能になります。例えば、あるユーザーがスマートフォン(SP)で商品を探し、パソコン(PC)で購入したとしても、GAでは1人のユーザーの行動として捉えることができません。しかしUAなら、ばらばらに見える行動を一本の線で繋げて、コンバージョンに至るプロセスもより鮮明に把握することができます。デバイスに関するデータとアクティビティのデータを結びつけることによって、ユーザー数の精度向上だけでなく、UAのクロスデバイスレポートにアクセスできたり、ユーザーのエクスペリエンスを分析したり、それぞれのデバイスが担う役割や強みが見えてきたりします。
ただしこの機能は、Webサイトにログイン機能がある(ユーザー毎にユニークなIDを発行している)場合しか利用できません。ECサイトや会員サイトならかなり活用できそうです。
他には、オーガニック検索のソースをカスタマイズできたり、セッションとキャンペーンのタイムアウトのハンドリングができたり、特定の参照やキーワードの除外設定ができたりするなど、従来のGAと比べて改善された、進化した点がたくさんあり、使用しやすくなっています。
ユニバーサルアナリティクスへ移行する方法
ここまでUAに移行する必要性をある程度ご理解いただけたと思いますが、従来のGAからUAへの移行は、前述のように、プロパティの設定とトラッキングコードの実装という2つのステップが必要です。
ステップ1:アカウントでUAのプロパティを設定する
この際には方法が2つあります。一つは新しいプロパティを設定する方法、もう一つは既存のプロパティをUAのプロパティにアップグレードする方法です。後者につきましては、Googleによる自動移行が進められているため、もし管理画面の「アナリティクス設定」の「プロパティ」欄に下記のような表示がありましたら、プロパティのアップグレードが完了していることになります。
ステップ2:UAのトラッキングコード(タグ)を実装する
プロパティの設定が完了したら、自動で生成された、もしくは要件に沿ってカスタマイズされたトラッキングコードを設置します。こちらもはじめて実装する場合と、既存のGAトラッキングコードをUAにアップグレードする場合があり、それぞれ注意点や確認事項などが異なりますので、事前に把握しておく必要があります。
移行・導入する際のポイント
移行作業によるデータの引き継ぎには要注意
従来のGAタグで集計したデータはUAにアップグレードした後も基本引き継がれますが、セッションの定義や計測方法の変更により、従来のGAで計測していた時の数値との間に乖離が発生する現象が見られます。また、管理画面上の内容(PV数、コンバージョン設定、IP除外設定など)は引き継がれますが、トラッキングコード上で設定したカスタマイズの内容は引き継がれません(全く別のトラッキングコードに書き換えることが必須なため)。しかも、一度UAに移行してしまうと、従来のGAに戻すことが不可能です。特にGAで取得している数値を重要指標として使用する場合、移行前後の数値のそれぞれの意味を十分理解し、適切な解釈をする必要があります。
適切な分析を行うために要件定義と実装設計が不可欠
プロパティのアップグレードはアカウントにて数分程度で設定できますが、トラッキングコードのカスタマイズや実装にはある程度の技術能力が要求されます。いくらUAに優れた機能が備えているとはいえ、設定が間違えれば正常に計測できませんし、そもそもどんなデータを取得する必要があるか、取得後はどう活用していくかなどの計画を立てておかないと、効果的な分析が行えるとは考えられません。
UAへの移行は単なる実装作業となってしまうと実にもったいないです。導入前にしっかり現状を理解した上、要件定義、KPI設計も含めて計画を立て、導入段階では目的に沿ってトラッキングコードのカスタマイズや機能設定などを行い、対象となる全ページに漏れなくかつ正しく実装する必要があります。導入後には集計したデータを活かせるようなレポーティングを定期的に作成したり、見えてきたユーザー像に合わせて施策を展開したりする運用も大事です。
上記のタスクを自社で行うことが難しい場合、専門知識を有する業者に依頼することをおすすめします。自社の状況に応じてある工程だけ外部に委託するか、まるごと任せるか、やり方は多様です。弊社もUA移行に関するコンサルティングから設計、コーディング、運用など、一貫してサポートさせていただいておりますので、必要がありましたらぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
アクセス解析の定番であるGAはUAへの進化の背景には、スマートデバイスの普及によるユーザー行動と意思決定プロセスの複雑化があると考えられます。いままで計測できなかったデバイスを新たに計測できたり、断片でしか見えなかった情報に関連性を持たせたりすることで、よりリアルなユーザー像に迫ることが可能になっています。マルチデバイスが一般化となった今、カスタマージャーニー視点でユーザーの行動を追わないと正確な観測ができませんし、的確に施策を打つこともできません。新しくなったユニバーサルアナリティクスの力を、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
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